倍音、英語ではOvertone と言い、中国語では「弦外之音」と書きます。弦以外の音という意味です。これは非常に興味深い翻訳ですね。弦つまり基音以外の音が聞こえて来るというわけです。
D-28とD-45Vの周波数特性を比較された方がおられて写真をお借りしました。
1弦Eを弾いて比較すると正に倍音が出ているのです。D45Vは1弦E 330Hz基音の他に660Hz倍音の音量が大きいのです。弾いた弦の音が330Hzなのに660Hzの倍音も一緒に聞こえて来るのです。(アプリの数字的な誤差は無視してくださいませ〜)
簡単に言えば、ピアノの鍵盤の真ん中のドを押した時に、オクターブ上のドもその上のドも軽く一緒に押されている状態なのです。なので単音でも音の厚みが違って感じるのですね。
もちろんギターのボディには反響があるのでD28も弦の周波数以外の音も聞こえて来ます。しかしD45が持つシステムは特別で、弾いた弦の特に2倍音、4倍音を発生させるのです。
これは普通にボディが共鳴しているのとは違う現象なので「倍音が入っている」という表現も「弦外之音」と同じように興味深い表現だと思うのです。
エム・シオザキがサウンド・メッセ2019で発表した通称R-1 です。D-45のコピーではなく、倍音を入れた独自のサウンドを作り上げたギターだと思います。
有田さんが弾くその倍音が入ったR-1の音を聞いてみてください。リバーブなしでもこのような音が出ます。
やはり倍音が入ったギターは音抜けが特別に良いように感じます。
実はマーチン社はウクレレにも倍音を入れる事が出来るのです。style-5と呼ばれるもので、ソプラノサイズでも720000円というお値段はまさにウクレレ界のD45!ウクレレからオルゴールのような美しい高音が出て来ます。
KOAだとstyle-5K, メイプルだとstyle-5Mとなります。一度大阪の三木楽器で5Mを弾かせてもらいましたが、倍音入りメイプルの可能性を感じた瞬間でした。
マーチン社はギターではKOAかローズ系しか45シリーズを作らないので、メイプルやマホガニーの倍音入りギターはどんな音がするのでしょうか? いつかAyersで倍音システムを開発したらぜひメイプルも試したいと思いました。
実はクラシック・ギターでイグナシオ・フレタという手工ギターにも倍音が入ったものがあると言われていますが、私は実物を弾いた事がないのです。どなたかお持ちであればいつか弾かせてくださいませ。結構お高いギターのようですが。
マーチンとは入り方が少し違うのですが、ビデオの音を聞くと、私の耳には倍音が入った独自の立体感を感じるのです。でもいつか実際に体験してみたいですね。違っていたらすみません。
バイオリンにストラディバリウスという億の単位で取引されるものがあります。これも倍音を感じさせると言われます。そのサウンドを聞いてみましょう。 2:30まで飛ばしてどうぞ。
単音なのにハーモニーのような厚みがありますね。
私は普段バイオリンの音色を私は沢山聞いていないので、参考までに通常のバイオリンを比較したビデオも見てみます。
確かにストラディバリウスは音の厚みが別格ですね。
なんとストラディバリが作った5本のギターのうち今も演奏可能なものが1本だけ存在するというのです。その貴重な動画もあるのです。
このように私はある時期から倍音に取り憑かれてしまい、何を聞いても倍音を意識するようになりました。すると人の声ボーカルも楽器と同じように思います。声が素晴らしいと感じる人はすでに声の音域に幅があります。
またピアノも同じなのです。良い音と感じたピアノにベーゼン・ドルファーやスタインウェイがありますが、それらも倍音が日本のピアノよりも豊かに感じられます。
倍音がある楽器は魅力的なのです。
では、どうやってこの音をギターに入れるか?
これがここ1−2年ずっと私のテーマとなりました。
これがAyersギターのOTSオーバートーン・システムへと繋がっていくのです。
その3へ続く