はじめにご紹介するのは知る人ぞ知る「ハナムラギター」なのです。
京王線明大前駅から徒歩三分の所にドトールコーヒーぐらいの店舗。入ってみるとそこにはギター用の材木が山と積んであり、迎えてくれたのは40代後半か50ぐらいに見える,赤いバンダナを首に巻き,ジーンズをはいた笑顔のハナさんでした。(花村さんホントは60才でびっくり!)
ハナさんは1人でギター製作の全工程をこなすのです。しかも,こだわりがすごいのです。仕上げはラッカーを薄くがモットー。その話しかたなどすべてが興味深いので、出来るだけ忠実にその時の様子を再現してみよう。
「にいちゃんよ。兄ちゃんがギターだと思って聴いているのはホントのギターの音じゃねんだよ」
えっどういうことだろう。
「ギターの音はこのトップ(表面の板)の響きで決まるのに、こんなに厚くポリウレタン(塗装)ぬったんじゃプラスチックの音しかしねーんだよ」
でどうするんですか?
「だから俺はラッカーの塗料をうすーくしかぬらねーんだよ。しかも,こんなにでっかくプラスチックのピックガードを付けたら木の響きなんてするわけないね。いっしっしっし」
それもそうだ。(ハナさんのギターはピックガードなしか木のピックガードが付く。木製は初めて見た。)
「兄ちゃんよ。アメリカ人は虫の音はみんなノイズだっていうんだぜ。ところが,日本人はこおろぎあり,鈴虫あり,キリギリスありで,それぞれ聴き分けて楽しめる音に繊細な民族なのよ。だから俺のギターは日本人のギターつうか、わびさびのギターなんだな。いっしっしっし」
なるほど,そう言われてみればそうだ。だんだん,信者になりそうだ。でも論より証拠だ弾いてみよう。
♪じゃらーん♯♭
「えっー(ё_ё) (ё。ё)なにっー! これは。」
なんと言えばいいのか。まるでクラッシックギターのようなやわらかい響きなのだ。
ハナさんが言う。
「もう少し弾いていればいい音出てくっからよ。」
本当なのだ。時間と共に少し音が変わるのである。なんともバラードが似合ういい響きなのだ。やさしくて心地よくアルファ波が出そうだ。しかも,隣で持っていたI氏のギターにびんびん共鳴するのだ。この鳴りは普通ではない。
「何が違うんでしょうかね?」私は尋ねた。
「まずは,さっき言ったラッカーを薄く。それと,板が米スギ一枚もの。一枚もののギターをヤマハに頼んだらえらい取られるんだぜ。80万つう話だ。こんな板だれも今は持ってねーよ」
(参考までに言うと、ギターのトップはふつう縦に真ン中から割れているのですがそれは、割ることで表面の材質を均等にするためと,板の大きさがギターの幅の半分でいいことからそうしています。)
とにかく,この音のやさしさは何なのだろう。僕のラリビーがいかに硬い音質なのかがはっきり分かる。
「この前マイク真木がうちのギターを持っていってステージで弾いたんだぜ。いっしっしっし」(こんな風に笑うのだ。)
やはり有名人でもこれの愛用者がいるのか。
私は尋ねた。
「それでこれいくらんなんですか?」
「16万。注文受けてから40日かかるけどね」
「えーーーー!やすすすぎる。ななんでそんな値段で出来るんですか?」
「おれっちの実家は長野なんだけどよ。親類縁者友達もみんな製材所なのよ。そこでいいのだけもらってくるから板は死ぬまでかかっても使い切れねーほどここに積んであんのよ」
確かにこの板を使い切ることは出来ないだろーな。
僕は入る時にマスターカードのステッカーを見逃さなかった。
私は言った。
「私これカードで今買います。分割出来ますよね!」
するとハナさんは言った。
「兄ちゃんよ。ギターのためにローンなんか組んじゃだめだ。ギターは余った金でやるもんだ。いっしっしっし」
それで,私はその時手に入れるチャンスを逃してしまったのである。その時以来16万が貯まったことはない。
総評 普通のギターに満足できない方で、やさしい響きの2本目ギターを探している人にはぜひお勧め。
修理 改造なんでもこいで、エレキはストラトもセミアコもあり。アコギはマーチンで言うと“D”タイプと“OOO“タイプの型紙がありカッタウェイはなし。しかも,完成は注文通りには行かないことが多く,ハナさんの気分でどんどん変わってしまうのだ。そして,すごいのは40日後の完成品を見て気にいらなければ買わなくてもいいというのだ。子供が一人家に残るみたいでいいのだそうだ。本当のコーヒーを使ったコーヒーサンバーストも素敵な色でした。ハナムラオリジナルの民族的楽器類もおもしろいです。
花村楽器 03-3322-6537
楽器製作の店 花村楽器HP
いつかこの人のギターを買いたいものです。
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