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niioka

エッセイその10-1  弦鳴りと箱鳴りその1 ギター本体編



先日全くギターを知らない方が2000円で倒産品処分市で買ったというギターを持ってきました。

よく見るとスロッテッドのヘッドに弦通しのブリッジですので,ガット弦を張るべきモノだと思いますが,張ってあるのはボールエンドからしてダダリオの鉄弦です。


弾いてみると全く箱鳴りのない,弦鳴りしかない,ぺらぺらサウンドです。



これは極端な例ですが,私が合板ギターは本物ではないと思う理由はこのあたりにあります。


2万以下の安いギターの特徴は箱鳴りがほとんどなくて,弦鳴り感が強いということです。

弦を新しくしたり,エリクサーを張ると何とか聞けますが弦が枯れると全くギターとして魅力的な音色が出なくなります。


でも,弦鳴り感が強い国産ギターは結構あって,値段が8万とかしても「弦鳴りだなぁ」と思うギターがあったりします。

( ̄~ ̄;)ウーン・・・


私も最初はキャッツアイの合板ギターでした。 弦が新しければ,2,3日は幸せというギターで練習していました。


確かに最初はそれでもいいんです。 練習に忙しくて,音色の良し悪しまでは気が回りませんから。


そんな単板主義の我が家にも実は合板ギターがあるのです。 それはLittleMartinです。


合板というかプレッシャーラミネートという高圧縮の板で,合板というよりも,集成材ですね。

合板というと板を薄くして重ねた印象があります。 これは,木屑を集めて固めたものらしいです。


でも,これを弾いたギター暦のある人は皆一様に,「いい音ですね。」とか「鳴りますね。」と言います。


実は子供用ギターとして探したのですが,入手可能なものは一通り試奏しました。

最終的には,ベビーテイラーかLittleMartinかでしたが,軍配はマーチンに上がりました。


何が違うかというと,弦高が低いとか指板がエボニー風のブラックミカルタとかピッチが正確などの良い点がありますが,何よりも箱が鳴るのです。


集成材ですが,鳴るんです。


もちろん,単板のいいギターと比べて鳴るというのではありません。 このギターとして音色のバランスが取れているのです。


これが不思議な所です。 もちろん同時に弾き比べをすれば甲乙はつきますが,そのギター単体で曲を奏でて音楽を聴くのですから,そのギターのバランスがよければ,一般にはいい音と認識されるのではないかと思うんです。

ところがこういう現象もあるんです。



高級品のオール単板でもいい音に聞こえない時があるのです。



(; ̄Д ̄)なんじゃと?


実はわりとよくあるんです。 素材も作りもいいギターなのに弦高が低すぎて,箱が鳴らなくなっていて弦鳴りしか聞こえなくて・・・,気持ちもげんなり。

(ToT)>゛スンマセン


もちろん,キチンとサドルとナットで弦高を調整して,本来の箱鳴りが引き出されると納得のサウンドになります。


でも,箱鳴りを引き出しすぎるとだめな場合もあります。

具体的な話をすると,ギブソンのJ45は1,2弦のジャキジャキ感がココチいいわけです。 それは,1,2弦の弦鳴り感が強く出ているということです。

ところが,これを調整の仕方によってはもっとMartinのように箱鳴り感がばっちりにすることも出来ます。


その音はどうかというと・・・。


ダメ! (T∇T )( T∇T) ダメ!


違うんですね。この音では満足できないんですね。 弦鳴りと箱鳴りのバランスが重要だと思います。

弦鳴りと箱鳴りのバランスをとる方法としてはいろいろありますが,全くギター本体を変えずに体験する方法があります。


これは必ず実験用ギターでやってみてくださいね。

ロッドを締めて行って,逆反りくらいまでネックをもって行きます。


その音を聴いてみて下さい。

今度はその反対にロッドを緩めてかなりの順反りにしてみてください。

開放弦の響きは違いますか。違うはずですよ。



簡単に言えば,これを弦鳴りと箱鳴りと考えていいと思います。



ロッドを締めて弦高が下がってネックも逆ぞっていると,ぺらぺらした弦鳴り感が強くなりますよね。

でも,緩めて緩めて箱鳴りがばくばく出てくれば,それがいい音か?


これがそうではないんです。


やはり,弦鳴りと箱鳴りがちょうどマッチするバランスがあり,回していった時に ここだ! という音になります。

つまり,ギターの音色のバランスがいいというのは弦鳴りと箱鳴りがちょうどマッチした時に感じられるものだと思うんです。


ちょうどリバーブのMIXつまみに近いものがあるかもしれません。 リバーブが深すぎるといい音には思えませんし,浅すぎると気持ち良くありません。

このちょうどいい場所があるはずなんです。 しかも割とその位置はシビアなんですね。

(  ̄O ̄)ホー


弦鳴りと箱鳴りを変化させるポイントは幾つかあります。挙げてみますと。


1 ロッドの回し具合

(弦高も関係してしまうが,変わらないくらいのわずかな幅でもいいギターの箱鳴りは変化します。)


でも,間違ってはいけないのは弦高はロッドで調整するものではなく,ナットとサドルでするものです。 その上で本当にわずかな微調整の話ですよ。


2 ナットの溝と弦の接触面積


接触面積が多くなれば箱鳴り感がアップして少なくなれば弦鳴り感がアップします。


2-1 弦の巻き数


2との関連で弦の巻き数が多ければ,ナットからヘッドにかけての弦角度は変わります。 そうすれば,ナットとの接触面積がいくらか変わってきます。

ギターにより違いがありますが,6弦などはこの傾向がはっきり分かりますよ。


3 サドルと弦の接触面積


これもかなり違いがあります。 サドルの山を細くして点接触にするとテンションが上がり,シャープな音色になります。

これが弦鳴りか箱鳴りになるかは微妙な調整ですね。 点に近づくと箱鳴りになるかもしれません。

サドルの上面を上手に削って少しだけの面接触にすると,弦なり感が増し,たくさん面接触させると甘く箱鳴り感が強くなります。

弦を弾いて放出されるエネルギーは,弾(はじ)く強さと弦の太さですでに決まっていますので,それをどのように消費させるか,または,どのように共振させるかということだと思います。

弾かれた弦の持つエネルギーは変わりませんので,弦鳴り感を強くするか,箱鳴り感を強くするかということだけだと思います。


4 ボディの厚みを変える


変えるといってもボディサイズは買った後では変えられません。

ププッ ( ̄m ̄*)


ドレッドの厚みとOMの厚みは違います。ドレッドが115~120ミリあるとすれば,OMタイプは90~100ミリでしょうか。

そうすると,OMタイプは箱鳴り感がドレッドよりも少なくなり,弦鳴り感が強くなります。結果として高音がきれいということになります。

ドレッドの高音弦はどうしてもシャープさが足りない感じがするということになります。


5 ブリッジピンを変える


ブリッジピンで意外にも音が変わります。 プラスチックのジャストフィットの軽く硬質のものは箱鳴りアップに貢献すると思います。

無メーカーでもいいものもありますし,Martinのピンとかギブソンのピンは箱鳴りがするような気がします。


これを,質量があるエボニーにしたり,硬質で質量も少しある,タスクにしたりすると弦鳴り感をアップできます。

箱鳴りが欲しい時はプラスチックにして,音色をシャープに締めたい時はタスクにするのもいいでしょう。


エボニーピンはSCUD(スカッド)がいいのですが,サイズが太いのと細目と二種類が同じ型番で存在するのが困ります。 スカッドの細いタイプが使いやすいですね。

穴が大きすぎる人はスカッドの太いのを探すのもいいでしょう。


6 根本的にギターが箱鳴りするメーカーのものにする


Martinやフォルヒやボジョアなどはギター本体が箱鳴りします。

それに対して,KヤイリやアストリアスTaylorなどは弦鳴り感を感じます。


良し悪しではなく求める音の違いということだと思いますが,生音は箱鳴りがある方が多くの人がいい音と感じます。


一般的には日本のメーカー製ギターは弦鳴り感が強い気がします。


日本製は高級機種でもその傾向があります。 湿度の高い国で作るのですから,トップの変形でクレームにならないように丈夫に作るのは自然な傾向でしょう。

それに対して,ボジョアなどは最初からトップのふくらみは覚悟の上で,修理しやすいようネックをはずしやすいようにボルトジョイントにしておきますというこのポリシーに私は惹かれてしまうのです。


オタクだから。

ププッ ( ̄m ̄*)


トップが膨れるかもしれないけどいい音を追求しているよ,という姿勢がすばらしいと思うのです。

フォルヒもその傾向があります。最近はトップのふくらみ対策としてブリッジプレートにいくらか細工がありますが,トップが膨れてもシダーの箱鳴り感はこれまた魅力があります。

Martinも箱が鳴ります。弦鳴り感とのバランスがすばらしいですね。 特にノーマルのシリーズよりも,ビンテージシリーズで弾きこんだMartinがいいですね。


幸せな気持ちになります。


箱鳴りが強いギターは少し弦鳴り感がアップするように調整していくといいバランスがあります。



いろんな調整をしていくとある所で・・・。

(o;TωT)o"ビクッ   いい音。



という場所があります。


弦鳴り感が強いギターを何とか箱鳴り感が出るように調整して行くとこれまたあるところで・・・。


¬(≧∇≦ ) ビンゴ!!!

というポイントがあります。



素人が調整をする場合

私のような素人調整で思うことですが,ナット側の接触面積を多くして,サドル側の接触面積を変化させて調整する,つまり,サドルで音色を調整するのが正しいと思うのです。


ナット側は直接弦高に関係して,鳴りも音色も弦高もやすり1つで決まってしまいます。ひとつ間違うと,交換の手間は大変です。

でも,サドルは削っても実質1/2の高さしか影響しません。 サドルで0.1ミリ削っても12フレットの弦高は0・05ミリしか変化しません。


交換もサドルの方が簡単です。(ビンテージは別ですが)


それで,ナット側は出来るだけ接触面積を多めに取ってサドルでバランスを取る方が追い込めると思います。 (やり直しがきくということですね。)



2008/5/14 追記 私も素人ながら調整したギターにリピーターがつくくらいになってきました。

最近の意見では,ナットにはナットの,サドルにはサドルの調整方法があると思います。 ノッチは浅くしか入れません。

ノッチもテンションを下げるために浅く入れて使う場合と,あげるために深く入れる方法とがあります。

ナットもテンションを下げる溝の削り方も,上げる削り方もあります。

サドルもテンションを上げる形状も,下げる形状もありますし,接触面積の加減で弦なりにも箱なりにも変化します。

これらに加えて最初にアイロンによるネック修正をします。

そして,秘密のレシピでやすりをちょいちょいと入れます。

これで出てくる音は非常に素直で,気持ちがよく,長時間弾けるギターの音なのです。 弦が新品でなくても1か月以上は楽しめるギターに仕上がります。

経験値により技術は向上するのでした。






弾き方による弦鳴りと箱鳴り  トミーの音色のなぞ


ピックで弾くと弦鳴りが強く,指で爪よりも皮膚をこするように使うと箱鳴り感が強くなります。

つまり,ブルーグラスやカントリー系のフラットピッカーがギターに求める音と,指弾き系のしかもアクリルをかけない自分の爪で弾く人と,さらにはトミーのように爪も使わない人は,同じアコギでも求める音が違う気がしています。

フラットピックを使うと弦鳴り感が強くなるので,最初から箱鳴りがするギターを使うのがいいはずです。


ボジョアとかMartinやフォルヒはそうですね。


でも,私もそうですが,指のこすり弾きをする人はいくらか弦鳴りのセッティングの方が出てくる音のバランスが取れます。

最初から箱鳴りが強すぎると,指のこすり弾きでは,出てくる音が甘くなり過ぎてしまうのです。

(  ̄- ̄)フムフム



トミーのギターの音色がなぜいいのか。これはかなりのなぞでした。 指で爪も使わずに弾けば音色は当然甘くなるはずですが,そうなりません。

同じように爪を使わない人にローレンス・ジュバーがいますが,彼がMartinで弾くときには甘さを感じることがあります。

ダック・ベイカーも爪なしですが,完全に甘すぎだなと思える音で入っているビデオを持っています。


ここから先は推論の域を出ませんが・・・。


トミーはかなり弦高を低くしていると思います。 それによって,ギター自体が弦鳴りのバランスによっていると思います。そして,OMボディです。

これによって,爪なしでも皮膚でこすってちょうど箱鳴りがプラスされてバランスが取れているんだと思います。


実験用ギターがあれば,弦高をギリギリまで下げてみてください。 6弦12フレットで2.2ミリとか1弦は1.6ミリとか。


ここまで来るとかなり弦鳴りの音になってくると思います。 これに指のこすり弾きで箱鳴り感が加わるとちょうどいい感じに鳴ると思います。

逆に全く未調整の弦高のMartinのD-28Vなどで指のこすり弾きではどうしても箱鳴り感が強すぎる気がします。


もうすこし弦鳴り感がアップした方がきれいに響く気がします。 フラットピッキングならこのままでもいいのかもしれませんが。



また,指にフィンガーピックをつける人もいますよね。 それだとやはり箱鳴り感が強めの設定の方がいい音になるような気がします。

このことはもうすこし私もいろいろ実験してみたいと思っています。

でも各メーカーはそれぞれの目指す音によって,バランスをとっていますので,やはり,万能ではなく,自分のスタイルによって最後に微調整するのがベストではないかと思っています。




どっちの調整がいいのか

そうすると弦鳴り感がある日本製ギターを箱鳴りするようにするのがいいのか,箱鳴り感があるギターを弦鳴りするようにいくらか調整する方がいいのか。

これはどっちでもいいんだと思います。 それこそ好みの問題ですね。


でも,弦高をギリギリにした時には箱鳴りがもともとあるギターでないと全くぺらぺらサウンドになりかねません。


弦鳴りギターから箱鳴りを引き出すにはサドルの高さをどうしても稼がないといけない場合もあります。

つまり,音色を求めると弦高を下げられない場合も日本製のギターにはあるということです。


新しいフォルヒはかなり下げられますよ。



でも,いいギターのすごい所はサドルの高さが0.1ミリ変わってもその違いがはっきりと出てくるというところです。

ボジョアはあまりにシビアで0.1ミリ違いで(12フレットでは0.05ミリしか違いがないです)3個のサドルを作りました。 その中から箱鳴りと弦鳴りのバランスがいいものを選んで使っています。

弾きこまれたリイシューのJ45などもシビアですね。 何をいじっても音に表れます。

それとは反対にあまり音に表れない鈍いギターもやはりあります。

┐(´ー`)┌





あなたのギターは弦鳴りでしょうか?箱鳴りでしょうか。

この弦鳴りと箱鳴りは実はピックアップでも同じ考え方ができるんです。



その2へつづく

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