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niioka

エッセイその2 日本製 タイムラグ イサトモデル 

ギターエッセイ  その2




ある日アコースティックギター6(リットーミュージックムック)の広告ページを読んでいて手が止まった。 そこにはなんと「日本で生まれた日本のギター タイムラグ イサトモデル35万」というものがあったからです。 イサトモデルなるものが存在するという話は今まで聴いたことがないですね。

しかも宣伝文がなかなかに興味深い。

「弾き込めば本当にギターは鳴るのか?」などと書いてある。

私は好奇心をそそられた。

住所は愛知県知多郡東浦町大字…。


クラフトマンの工房ならいざ知らず、なぜ専門的なギターショップが田舎にあるのか? さらに好奇心が高まります。そして,私は新幹線に乗ったのでした。

名古屋市から車で約1時間ほど行くとそこにはなんと、トミーフーズという典型的な地方のスーパーの駐車場の一角にタイムラグなる看板が見えてきました。

しかし、スーパーの駐車場の1画でクリーニング店などと軒を並べるこの店が本当にアコギの専門店なのか?少し不安になります。

店に入ると感じのいい店主が迎えてくれ、私が秋田から来たことを聞くと・・・

「この場所で営業しているのは踏絵(ふみえ)なんだよな。ホントに好きなやつが来てくれればいいと思っているんだ。」

と話してくれました。


早速私は,飾っているいろんなモデルには目もくれず、「イサトモデル」つまりこの店のオリジナルギターの話を聞かせてもらうことにします。それがまた興味深いのです。

店長が言いいます。


「いいギターは初めから鳴りがいい。だんだん鳴りが良くなるというギターなんか本物じゃないね。」


なにやらハナさん(ハナムラギターの花村さん)とは対極にいる人のようでした。

トップはインゲルマン・スプルースを使っていて,自分が納得できる材があと残りギター3本分しかないという。 イサトモデルはこの前売れてしまって今店にモノはないが、形は少し違うものの(いわゆる“OOO”タイプ)材質などはほとんど同じというオリジナルギターならあるという。

これだけの板はもうめったに見つからないと自信があり、さらにイサトモデルは湿度などのことを考えて制作の季節まで限定されているのだ。(つまり梅雨時には欲しくても作ってもらえないのだ)論より証拠まずは弾いてみよう。



♪♯ジャラーン♭♪

「こっこれはすごい倍音だ!」 正直驚きました。鳴りがいいとはよく言ったものです。 確かに倍音が良く出ている。特に彼自身イサトマニアなので,イサトが良く使うオープンD6を意識して,響くようにしてあるらしい。 D6は6弦~1弦でDADF♯BDというチューニングでDが3本のためただでさえよく響くのだ。



私は尋ねました。


「何でこんなに響くんですか。」


彼は言った。


「それはこのインゲルマン・スプルースだから。ここにサウンドホールを抜いた板があるから叩いてみてよ。」


テーブルの上にはクリーム色の未塗装の丸い板が何枚かありました。 それを叩いてみると,確かにインゲルマンの音は違うのです。

板の響きそのものが違っている事実をこうして確かめられたのは初めての経験でした。

店長が言います。

「特にイサトさんの“風の谷”という曲を弾いたらこれ以上のギターはないね。」(これはD6の開放をいかした曲なのだ。) そう言うと彼はそれを弾いて見せた。確かに響く。

「イサトさんは今ラリビーと契約があるのでそれが終わるまでこれをステージでは弾けないんだけど国産のフィンガーピッキングギターとしては最高じゃないのって言ってくれてるんですよ。」

イサトさんはよくここに寄って行くらしい。

そのうちに店に来ていた常連さんも会話に加わって来た。その人もこのギターがいいと言う。彼が言います。


「今まではソモギを使っていたんだけれど日本の湿気に会わなくて反って来たりしてもう手放したんだ。」


ソモギを使うアマチュアがいるのかい!(このソモギとはカリスマクラフトマン“アーヴィン・ソモギ”氏のことで、彼は天からの啓示のある日にギターを作るなどといわれその質は最高だが値段の方も150万を超えるはず。イサトも何年か前には使っていた。)


なんともマニアックな店なのだ。


帰り道、日本中にはまだまだこんなマニアな人がいるものなんだろーなと思いながら少し自分なりに今日の話を整理してみました。



ギターの音をピックアップで拾うのが前提であればカチッとした,やや硬質の音でないと良い音には聞こえないと思うのです。

これは少し化学調味料とも似ている気がするのだけど、これを入れないと客はおいしいと感じないので中華でも焼肉でも何にでも入っていてあたりまえで,自然食レストランなどは味が薄いという評価になってしまうのが最近の実情でしょうね。 だから,ギターの音もカチッとした音を多くの人が評価するのが現状であればそれが基準になってしまうのは仕方がないことなのかもしれないなーなんて考えながら知多半島名物の「えびせん」をかじるのでした。

総評 メインに出来る一本。ラリビーC-10クラスと弾き比べてみて欲しいギター。


35万まで出せる人にはお勧め。ギター制作の方は東海楽器にいる職人さんが行うということでしたが,仕上げもしっかりしていて形も結構かっこいいですね。

メインギターにはカチッとポリウレタンのギターでセカンドにハナムラギターなんかいいじゃないだろうか。

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