弦高の考え方とサドルの削り方続きです。 失敗例付きですので,たぶん参考になると思いますよ。
さて,音を出してみましょう。
♪ジャラーン
(≧∇≦)b OK グー
いい音です。これぞラリビーです。ラウルの音です。
しかし,もう少しだけ弦高を下げるとどうなるでしょうか。
現在は6弦から
2.6
2.5
2.3
2.2
2.2
2.1
こんな感じでした。
なんと,いいと思えたこのバランスからさらに下げてみようというのです。
やはり,1弦は一般にされるようにもっと下げたいですよね。
弾きやすさを求めましょう。
1弦は1.7くらいで,2弦が1.8というのはどうでしょう。
3弦も2.0とかにして,6弦が2.5くらいで。
トミーはもっと低い感じがするし・・・。
1,2弦をとにかくもう0.3~0.4ミリくらい下げてみましょう
これが・・・間違いの元だったのです。
o(ToT)o ダー
やって見ました。実際に。
弾きやすいんです。
でも,1曲弾くとメロディーが聞こえてこないのです。
引っ込んでしまったのです。プレーン弦の押し出しと艶が足りません。音量が低いというのが正解でしょう。
3~6の巻線は聞こえます。いい音です。
つまり,正確に音色を分析しますと,低音側の巻き線の4本の音量に比べて1,2弦のプレーン弦の音量が低い感じなのです。
(ー'`ー;) ウーン
これはどうしたものでしょうか。
もっと低い調整も世の中にはあるはずです。
でも,私はこの経験は初めてではないのです。
何度目かなのです。
本当に困ったときは調整の師匠に相談します。
この度もいいアドバイスを頂きました。
簡単にいうとこういうことです。
ギターの箱鳴りを点接触で最大限に引き出す事が出来ます。
そうすると当然ギターは鳴ります。音量も上がります。
そして,弦高が次の状態だったとしましょう。
1弦が2ミリで6弦が2.5ミリでバランスが取れているとしましょう。
余談ですが,この数字はスタジオMの標準です。
このバランスは実はすごいんです。
弦を変えても,多少反っても,ギリギリではないので余裕があります。
そして,音量も引き出せますし,プレーン弦も音量があります。
長年の経験から生み出された,黄金のレシピというか最も安全に弦高を下げられる数字がこの辺だと思います。ここから下げるのは危険も伴うということですね。
ここから下げていくとしましょう。
ギターはドレッドで箱が鳴るタイプだとしましょう。
さらに弦高を0.2ミリ下げると・・・・・。
1.8ミリの2.3ミリになります。
これはかなり限界に近い数字になってきます。
というのは,低音の巻線の方はこの低さでも音量が出るのです。プレーン弦は1.8ミリくらいを境目に急に音量が下がって行くのです。
(」゜ロ゜)」 ナント!!
さらに0.2ミリ下げて見ましょう。
1.6の2.1ミリです。
明らかに低音にプレーン弦が負けてしまいます。
メロディーが立たなくなります。これでソロギターだと1,2弦を強く弾くことになりバシバシとバズッた音になりかねません。
そうすると,ギターの表現力は落ちてしまいます。
( ̄ヘ ̄;)ウーン
低音が大きすぎるという事は・・・
つまり,元々低音不足のギターつまり,OMタイプでなければ弦高をギリギリに下げたときにはバランスが悪くなってしまうということなのです。
(」゜ロ゜)」 ナント!!
これは,一概に言えないと思いますし,そのギターの個体によってももちろん違うと思います。
つまりドレッドとか低音が出るタイプのギターは音質を優先すると下げられる弦高に限界があるということなのです。
トミーがOMを使っても低音のバランスが良く聞こえる理由はおそらくここにあるのではないかと思います。
(・_☆) キラーン
OMで弦高はチョーギリギリ。おそらく1弦は1.6か1.5ミリの6弦は2・1ミリか2.2くらいか。
ナット側もおそらく推測ですが,かなり低いでしょう。
6弦が0.5の1弦は0.3とか。
ちょっと力を入れるとすぐにバズる感じです。
これでミディアムゲージでテンションを稼いで音色も太めに出てバランスが取れるという感じでしょう。
ここまで下がるとミディアムのきつさもほとんどないと思います。
というわけで,このラリヴィーC-09では1弦の弦高を下げすぎると低音の箱鳴りに負けてしまうのです。
後は弦を太くするという方法もありますが,このテンションでミディアムにするとスタンダードチューニングでは使えないギターになってしまう可能性があります。
ちなみに南澤さんも弦高はかなり低めに設定すると書いています。6弦が12Fで2ミリというのです。
でも,ソロギターの調べを聞くとメロディーは聞こえます。
彼は1,2弦をミディアムゲージの013,017に変えています。
弦高をギリギリにするとそういうバランスの取り方まで必要になる場合もあるということですね。
そう考えると,自分の勝手でこのくらいの弦高がいいと言って弦高を調整すると全く味気のない,ギターに仕上がる可能性もあるということですね。
音色を求めれば,自分の都合だけで弦高を決められないとも言えますよね。
というわけで,ラリヴィーはサドルを弦高を上げて,もう一度作り直しになったのです。
「(≧ロ≦) アイヤー
素材は9280です。
手前が1弦側で最初から調律になっています。山も点接触なので,指板のアールさえあっていれば使いたい所ですが,全く合いません。
このラリヴィーは指板のアールが少ないのです。(最近のは少しありますね。)
指板のアールが少ないとリードでチョーキングなどは苦手ですが,セーハが楽になります。クラシックのいい伝統ですね。
幅をピシッと出したら,次は底面です。 底面も慣れてくると見ただけで分かるようになってくるから不思議です。
心を鬼にしてこの山をすべて削るのです。
目標は入れておくのがいいですよ。
もう少しです。
テッペンが出たらラインを書いて,削って行きます。
1,2弦は普通ですが1弦もやや後ろ側にしてテンションを稼いで音量をアップしようと思います。
補正は5弦に入れずに6弦ですね。
測る場所がずれると弦高が変わるので,各弦の位置を記しておきます。
削り過ぎないように,最低のラインも入れておきます。
このライン以下に削るとかっこ悪いし,せっかくのサドルのフィットが台無しですね。
補正の境のブロックにはヤスリで最初から入れておきます。
このバイスでは端の処理はこうやってはみ出させて咬まないと出来ません。
ウッドマンみたいにMcのバイスがいつか必要になる日も来るかもしれません。
大体出来てきました。 もう一度弦高を後から微調整するくらいの気持ちでやるのがトーシロー的にはいいんです。
コンパウンドで磨きます。
重要です。
この山の頂点の線が見えますか。
点接触と言っても完全な線にしてしまうのではなく,最後に0.1ミリくらいの頂点のラインが出るくらいにします。
もしくは完全に点にした後に,上面をヤスリで0.1ミリこすってもいいでしょう。
いずれにしてもこのラインで音が違います。
プレーン弦は明らかに違います。巻線も耳がよければ違いは分かります。
完全な点になりすぎると,音色は甘くなります。箱鳴りが強くなり過ぎます。この0.1ミリのラインを忘れずに。
最初完全なとんがりにして,次にこのラインを入れて実験してみてもいいと思いますよ。
サドルはこんな風に途中で止まるくらいキシッと入るんです。
これでも押すとさくっと入ります。
このフィット感が重要ですね。
完成した2個目のサドルです。
最終的には1弦と2弦の音量の調整のために1弦を少し下げました。2弦のナット側も微調整して音色を整えました。
ナットの溝の調整でどう変わるかと,サドルでどう変わるかを理解していると調整の幅が広がりますね。(私も完全に分かっているわけじゃないんですよ。)
(^∧^) スマンノウ
最終的な弦高は1弦が2.1ミリ,2弦2.2,6弦が2.5です。
DADGADで弾いても,もっと下げてもメロディーが残ります。
スタンダードチューンでもメロディーが残ります。
低音の迫力もあります。
このギターの場合はこのくらいの弦高の方がいいんでしょう。
ライトゲージでも種類を変えればもうわずかに下げてもいいくらいかもしれません。
(≧∇≦)b OK!
ようやく,ここまでたどり着くのでした。
これは普通のショップでは出来ないレベルの調整だと思います。使う人の勝手にまで合わせた調整です。
(⌒^⌒)b なるほど
この音はイケますね。
2006/2/18
その後,やっぱり弦高を下げました。
下げても大丈夫なのがラリビーです。
低音の量感を調整するには,点接触の頂点で調整がある程度できます。
低音が出すぎるなら,弦高を下げるのもそうですが,頂点を少し平に削っていくらか面にするとすぐに箱の鳴り方が変わります。 これも調整できるポイントでした。
やはりラリヴィーはいいギターなんですね。
さすがジーン・ラリヴィー。
SPECIAL THANKS バナナムーン 松本師匠!
次のテーマは,メロディーが立つと同時に弦高を下げるです。
OMの調整ですね。
(ノ^_^) ハイ!
2008/3/13
その後,さらに研究は進みました。
弦高を下げるには,ネックの起きが重要な鍵を握っています。
起きがわずかでもある場合にはこのページで説明するような,弦高を下げるとプレーン弦の力が出ないという現象があります。
そうであってもプレーン弦のテンションだけを上げる方法もあります。
しかし,ギター調整の原点はネックの起きかもしれませんね。
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